6月 漢文教育研究会のまとめ

6月26日(日)14時30から16時30分 於広島大学附属高校多目的教室

 御殿場南高校・望月勇希先生、都立橘高校・山際咲清香先生、安田女子大学・先坊幸子先生、福山工業高校・鶴田めぐみによる李白「春夜宴桃李園序」の学習指導案の発表と検討がありました。指導案は四者四様であり、さまざまな視点をもとに指導案を作成していました。

 望月先生は「浮世若夢。為歓幾何」に着目し、宴席と浮世を対比することを通して李白の人生観を読み解く授業の構成でした。山際先生は対句表現に着目し、対句表現をとった意味や目的を考えることでこの文での表現の効果について考えさせるような内容でした。また、先坊先生はこの作品の主題について考えることを通して、李白の人生観や思いについて考えさせる内容でした。鶴田は四六駢儷文の持つリズムに着目し、リズムの持つ効果と李白の心情との関わりを考える内容でした。

 また、学習指導案の検討では、文体が決定するものとその限界があるという意見が出ました。実際に四六駢儷文で書かれた歴史書というものはなく、全てのものを書き著すことはできないため、内容により向き不向きがあるということでした。また、李白はこの作品の中で、対比を意識して書いており、時の流れという大きいものと宴会が開かれている今この時という小さなものを意識しているという意見もありました。四六駢儷文の持つリズムを生かす授業の工夫としてプレゼンテーションを活用した方法の提案がありました。小松先生からは「浮世若夢。為歓幾何」という言葉に着目し、人生の儚さや生涯を振り返る視点からこの言葉の解釈についての提案がありました。

 人間の一生は天地の大流の中から見ると水の煌めきのように小さく儚いものです。その一瞬の光に人は命をかけるのかもしれません。言葉というのはその輝きを留めておく手段なのでしょう。

 今回もオンラインの開催となり、東京、高知、静岡と全国からの参加者を得ての開催となりました。設定に関して不手際があり開始時間が遅くなってしまいました。画面を通して、温かい心遣いに触れることができました。人との繋がりは対面や画面上といった手段にあるのではなく、思いやるという行為にあるのだと思います。次回もよろしくお願いします。                                                (鶴田記)