5月29日(日)14時〜16時 於広島大学附属高校多目的教室からオンライン
広島大学・佐藤大志先生による李白「春夜宴桃李園序」の教材研究の発表がありました。
駢文で書かれている意味に着目し、文体が持つ性格について捉えた上で、どのように李白が表現しているか、文体を生かした授業について提案がありました。古文で書かれた韓愈「雑説」とは異なり、駢文は対句表現や音律の変化、抑揚など表現技法とともにたゆたいや情緒の文章といった性格があります。教科書のように文を続けて示すのではなく、対句となっている文を区切って表示をすることで駢文の特徴やその文の意図を生徒が捉えやすくなるという指摘もありました。
また、この文章の「遊宴詩序」という面に着目し、大伴旅人の「梅花歌序」には王羲之「蘭亭序」の影響受けているのではないかという論文を元に「遊宴詩序」の特徴についての発表もありました。遊宴詩序とは遊宴で詠まれた詩をまとめたものに由緒を記す序文を書き記録したものです。状況説明を果たす序として誕生した遊宴詩でしたが、時間の推移や作者の感情も記されていくに従って、それ自体が自己主張するような方向へと変化し、序そのものが独特の強烈な輝きを放つ存在となり、その一つが「蘭亭序」であるとされています。大伴旅人の「梅花歌序」にも「蘭亭序」の表現の影響が感じられるということでした。
その後の意見交換では、文体を活かした授業のあり方についての質問がありました。文体を中心にした授業というよりは、文体の持つ力やその文体が使われている背景を教材研究の際に捉えておくことで、授業の幅が広がっていくのではないかということでした。また、じっくりと時間をかけて言葉を読む授業となるように説明しすぎない工夫や前提の内容の理解をどのように行なっていくかというところまで話が及びました。
記された文の背景には常に、その時代の人間や作者が生きた世界が広がっています。その世界に触れ、じっくりと時間をかけその思いを感じ取ることが、移り変わりの激しい現代に住む私たちが忘れているものを取り戻す時間となるような気がします。
今回も、オンラインでの開催となりました。長崎、東京、静岡と幅広い地域からの参加者を得て、人の思いを考えるひと時をともに過ごしました。次回もよろしくお願いします。
(鶴田記)