漢文研4月まとめ

4月16日(土)10時~12時 於広島大学附属高校 多目的教室

 御殿場高校・望月勇希先生、都立橘高校・山際咲清香先生、福山工業高校・鶴田めぐみによる韓愈「雑説」学習指導案の発表と検討、広島大学付属高校・増田知子先生による韓愈「雑説」公開授業での実践報告がありました。

 「雑説」の指導案発表は望月先生、山際先生、鶴田の三名の発表となりました。望月先生は資料の提供のみとなりましたが、『「満たされない」という感情を表現するには』というテーマをもとに韓愈がどのような立場でこの文章を書いたのか考えさせる内容でした。また、山際先生は「塞翁馬」「先従隗始」の「馬シリーズ」の三回目として、馬の存在に着目し、韓愈の主張を捉えていくという内容でした。鶴田は韓愈の置かれた状況を考えるとともに、李白「春夜宴桃李園」と文体を比較し、感情や意図の明確さを考えさせる内容でした。

 また、増田先生による実践報告では、「主張をどのように伝えるのか」ということをテーマとして授業でした。意見文を作成し、「雑説」の表現や主張の表し方に着目した授業内容をもとに、自らの文章を書き直すという内容でした。実際の授業を振り返り、目標の設定の高度さと「漢文」の読解の活動と意見文を「書く」学習のつながりの難しさが課題に挙がりました。

 学習指導案の検討では、「板書」の使い方や段落の切り方によって授業の在り方が異なるという意見がありました。また、意見文の授業の在り方として、広島大学の佐藤先生から論理ばかりに着目していてもいいのか、という意見もありました。「雑説」を考える際、「なぜこの物言いにならざる得なかったのか」という書き手の状況を表現から読み取っていくこと、また、ロゴスだけでなく感情に訴えるパトスや語り手の人格に着目するエトスの視点から意見文を捉える授業の在り方にまで話が及びました。

 人の心を動かす言葉には、冷静な視点として理解する「ロゴス」だけでなく、直接感情に訴えかける「パトス」、その言葉をどのような人が発しているのかという「エトス」が組み合わさっています。これは、ときに人間が説明のつかない行動や言動をしてしまうという現象を表したものなのでしょう。

 今回もオンラインでの開催となりました。東京、広島、尾道、山口と全国から参加者を得ての開催でした。画面の向こうのそれぞれの方の状況を考えながら会議をするというのがまた、多様な解釈が生まれるきっかけにもなっているのかもしれません。次回もよろしくお願いいたします。

(鶴田記)